
photo by Daniel Hennemand
提案資料やプレゼンテーション資料の作成など、今やビジネスに欠かせない文書作成ソフトとなったパワーポイント(PowerPoint)。
営業・企画職の方であれば、その操作スキルは必須になりつつありますが、意外と自己流の人が多く、誰かにしっかりと教わる機会もないというのが現実。苦手な人も多いと思います。
そんなわけで今回のテーマは、パワーポイントによる資料作成のコツと見やすい資料の作り方について。
以下、資料の構成からデザインまで、これだけ抑えておけばOKというポイントをまとめました。
いきなりパワーポイントを作り込まない

photo by Rachel Smith
パワーポイントでプレゼン資料などを作成する際に最も重要なのが「提案の骨子を作ること」。
いきなりパワーポイントで資料を作り込もうとすると、論理展開がブレてしまったり、途中でつまづいてしまったりします。
そこで、まずはワードやテキストエディタなどを使って、以下をテキストに起こします。
- 資料で伝えたいこと(結論)
- 資料で言いたいこと(メッセージ)のリスト
- 論理展開のフロー
そして、書き出したそれらを以下の項目に当てはめ、テキストベースの大まかな構成を完成させます。
- 目次
- 各スライドのタイトル
- 各スライドのメッセージ
- 各スライドのメッセージの詳細
この作業で重要なコツは、一つ一つの要点をなるべく短い文章で箇条書きにすること。
また、記述した文章はそれぞれ「伝えたいメッセージなのか?」「メッセージの詳細を説明する内容なのか?」を見極め、粒度を合わせおくことも大切です。
◆ テキスト化の例

頭の中にあることは、テキスト化することで整理することができます。この作業を事前にやっておくと、言いたいこと・伝えたいことを整理してパワーポイントに表現することができます。
また、テキスト部分はこの作業でほとんど完成しているので、実際にパワーポイントを使って作業を行うときには、デザインや図解などに労力を割くことができます。
もし資料作成した資料を上司に見てもらう必要があれば、この骨組みができたタイミングで一度確認してもらうのが良いでしょう。
ヘッダーとボディに分け、書式を固定する
パワーポイントで見やすい資料を作る上で有効な手法として、書式を固定して一定の表現方法でメッセージを伝えていくことがあります。
書式を固定することで、提案を受ける側は頭の中で情報を整理しやすくなり、資料で言いたいことが伝わりやすくなります。
具体的には下記のような書式のレイアウトが効果的。
◆ 効果的な書式のレイアウト

提案資料のすべてのスライドを、原則このレイアウトで統一します。各エリアに記載すべき内容は下記の通り。
①スライドのタイトル
ここには前の手順で作成した「各スライドのタイトル」が入ります。
タイトルは、このスライドが何について書かれているかのトピックスとなるように記述します。
②ヘッダー
ここには前の手順で作成した「各スライドのメッセージ」が入ります。
メッセージはタイトルに対する「結論」です。短く簡潔な文章でそのスライドで言いたいことの結論を記述します。
また、各スライドのヘッダー同士のつながりを意識し、資料のヘッダーだけを読めば、相手が提案内容を理解できることを目指します。
③ボディ
ここには前の手順で作成した「各スライドのメッセージの詳細」が入ります。
ヘッダーで記述した結論を説明する具体的な内容を、なるべく図解して記載します。調査資料のデータやキャプチャ、フロー図などは、このエリアに掲載します。
このように、提案資料のレイアウトを固定し全スライドを統一化することで、提案の受け手により内容が伝わりやすくなります。
また、一定のパターンで制作することができるので、資料作成時の効率を上げる効果もあります。
1スライド1メッセージとする
パワーポイントでの資料作成においては、1スライドに内容を詰め込みすぎないというのが鉄則。
詰め込みすぎると、スライドの中身が細かくなり見にくいだけでなく、一つのスライドに含まれる情報量が多すぎて、提案を受ける側も要点を整理して理解することが難しくなります。

上のスライドのように、パワーポイントで資料作成をする際は1スライドに対して1メッセージとなるようにします。
スライドを分ける分、資料のボリュームは多くなってしまいますが、一方で各スライドをテンポ良く説明できますので、プレゼンテーションや提案をスムーズに進行することができます。
スライドの繋がりを意識する

photo by Bowen Chin
これまでの話でも触れましたが、資料を作成する上では、前後のスライドの繋がりを意識することがとても重要。
どんなに作りこまれた資料でも、前後のスライドの内容・ロジックの繋がりが薄いと、どこかぎこちなく、ページを寄せ集めただけの印象を与えてしまいます。
前後のスライドに繋がりがある資料は、スライドが移る際に以下のような接続詞を入れることができます。
1)順接
したがって 、そうだとすれば 、だから 、ゆえに
2)逆接
しかしながら、それどころか 、ところが 、にもかかわらず
3)並列・追加
そして、さらに 、そればかりか
4)対比・選択
または
5)説明・補足
たとえば 、つまり 、なぜなら
作成した資料をチェックする際は、スライドが移る際にこれらの接続詞を入れることができるかチェックしてみると良いと思います。

もし前後のスライドの間にちょうど良い接続詞をいれることができなければ、論理が飛躍していたり、繋がりの薄い展開を論じている可能性があります。
その場合は間を繋ぐ新たなスライドの挿入や、前後のスライドの見直しを考えたほうが良いでしょう。
目次ページをつける
目次ページをつけることも、パワーポイントで見やすいプレゼン資料を作るコツの一つ。

資料の序盤に目次があると、「これからどんな構成で提案をするのか」をあらかじめ伝えた上でプレゼンテーションを進めることができるので、提案相手に理解されやすく、質問で提案を遮られたりすることを減らせます。
また、スライド数が多い提案資料は下図のように、目次のテーマが変わる都度目次ページを差し込むことが効果的。

これを行うと、聞き手は話の流れの中の「どの位置にいるのか」を確認することができるので、より全体像が伝わりやすくなります。
なるべく図解し、テキストは最小限に
プレゼン資料・提案資料に記載する情報は、テキストで論じるよりも図解して視覚的に表現した方がより伝わりやすくなります。
相手に伝わりやすい資料を作成するためには、伝えたい情報をなるべく図解し、テキストを最小限にすることが重要です。
◆ 悪い例

上のスライドのように、言いたいことをテキストのみで表現すると、提案を受ける側は読むことに労力を要し、理解をするのに苦労してしまいます。
◆ 良い例

上のスライドのように、言いたいことが図解してあれば、一目見ただけで何の話をしているのか(ここでは「スライドのレイアウトについて話をしている」ということ)を理解することができ、相手に伝わりやすくなります。
複数社のコンペとなるような提案では各社から膨大な量の資料が集まるため、読む側は労を要します。まずは相手に「ちゃんと資料を読んでもらう」「理解してもらう」ということをクリアしなければならず、そのためにはなるべく図解し、テキスト量を最小限にとどめることが重要となるのです。
デザインを統一する
プレゼン資料をより見やすいものにするためには、デザインを統一することも重要。
カラー、フォント種類、フォントサイズを統一するだけでも、資料の見やすさが大きく向上します。
カラーの限定
プレゼン資料の中で使用するカラーを限定し、資料のデザインに統一感を持たせます。
色々なカラーを使いすぎると、資料がごちゃごちゃした印象となってしまうため、できれば2色、多くても3色に限定する必要があります。
最初に使用するカラーを定義し、定義したカラー以外は使わないという基本ルールのもとで資料作成を行います。
ベースカラー
グレートーンのカラーを選びます。前述のヘッダーの背景色に設定したり、強調する必要のないテキストを囲ったりすることに使います。
アクセントカラー
レッド系やオレンジ系などの明るいカラーを選びます。重要な部分を目立たせたいときに使用します。
サブカラー
ブルー系やグリーン系などの落ち着いたカラーを選びます。目立たせたいがアクセントカラーを使うまでもないときに使用します。
◆ カラー使用の例

上のスライドはベースカラーをグレー、アクセントカラーをオレンジ、サブカラーをブルーにしています。
フォント種類の統一
一つの資料で複数のフォント種類を使用するとそれだけで読む側の印象が悪くなり、「資料作成者のスキルが低い」「資料の中身が精緻でない」というような印象を与えてしまいます。
一つの資料を複数のメンバーで作成する場合でも、フォントの統一は基本中の基本ですので気をつけなければなりません。
おすすめのフォントは、メイリオ、Meiryo UI、MS Pゴシックあたり。
メイリオ、Meiryo UIは可読性に優れており、太字にした際に変化がつけやすい一方、あまり文字が大きすぎるとバランスが悪く見える可能性があります。
MS Pゴシックはメイリオに比べて固い印象ですが、硬派でスッキリとした資料を作るのであればおすすめです。
どのフォントを選ぶかは好みですが、一般にパワーポイントの資料では明朝体は避けられることが多く、よほど必要なケースでなければ避けた方が良いかと思います。
フォントサイズを統一する
フォントサイズもあまりにバラバラだと、読みにくく稚拙な印象を与えてしまいます。
資料で使用するフォントのpx数を大・中・小に分け、それぞれを定義するのが有効です。

大サイズは見出しやタイトルに、中サイズは基本的なテキスト部分に、小サイズは注釈部分などに使い分けを行うと、資料がすっきりとし、どのテキスト部分が重要なのか一目で分かるようになります。
スライドの端に余白を持たせる
よくスライドの端ぎりぎりまでコンテンツを埋めて資料を作る人がいますが、あまり良い資料とは言えません。
なぜなら「スライドに内容が収まりきらない=資料がまとまっていない」という印象につながるからです。
パワーポイントで資料を作るときには、上下左右の端に適度な余白を取り、その枠内にコンテンツを整理するようにしましょう。
◆ 悪い例

上のスライドは端ぎりぎりまで使ってコンテンツを乗せています。どこか資料がまとまっていないような印象があります。
◆ 良い例

上のスライドのように、資料の端に適度な余白を取ると、資料がすっきりまとまっているように見え、印刷しても書類としてきれいな印象になります。
テキスト・図形の端、間隔を揃える
テキストを箇条書きにしたり、図形を並べる際には、それぞれの端や間隔を揃えるのが基本です。
これを怠ると提案相手に稚拙な印象を与えてしまいますが、パワーポイントを使った資料作成に慣れていない人だと意外とできていないことが多いです。

上のように、テキストの開始位置が微妙にズレていたり、縦に並べられたテキストとテキストの間隔が一定でなかったりすると、とても格好悪く見えてしまいます。
このような場合は、パワーポイントの機能である「配置/整列」の「左揃え」や「上下に整列」などを必ず使用し、整えてあげる必要があります。
▼ 図、図形、テキスト ボックス、またはワードアートを整列または配置する
(Microsoft公式)https://support.office.com/
図形の効果は多用しない
パワーポイントではスライドに図形を挿入する際に、その図形に影をつけたり、立体感を出したりするような「図形の効果」を設定することができます。
「図形の効果」はうまく使いこなせれば、資料をグラフィカルなデザインに仕上げることができますが、大抵の場合は資料のデザインの統一感を損ねる原因となることが多く、自信がなければ避けた方がよい機能です。

上のスライドのように、図形の効果を使うとその部分が周りと比べてかなり目立ちます。

特にこだわりがなければ、上の図のように、影や立体感のないフラットな図形のデザインで十分です。
おわりに
パワーポイントを使ったプレゼン資料・提案資料はあくまで提案する側と受ける側を繋ぐ、コミュニケーションツールです。
対面でのコミュニケーションを補助し、意図するところを伝えるだけのツールであるため、細部まで全て詰め込む必要もなければ、美しいデザインも必要ありません。
資料を作成する際には、提案の要点となる部分のみを取り出し、それを明確な論理展開で並べていくことが大切なのです。