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アラビア半島のペルシャ湾沿いに位置する中東の大都市「ドバイ」。
ドバイというと、きらびやかな摩天楼の街並みやお金持ちのセレブ、オイルマネーや石油富豪が思い浮かびますが、実際にどんな国でどんな人が住んでいるのか、あまりイメージが湧かないかもしれません。
今回は、日本人にはあまり馴染みのない、中東屈指の都市「ドバイ」についてご紹介します。
中東屈指の都市「ドバイ」とは
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「ドバイ」というと高層ビルが密集した派手な都市が思い浮かびますが、正確には、アラブ首長国連邦の首長国の一つ「ドバイ首長国」とそのドバイ首長国の首都「ドバイ市」のこと。
アラブ首長国連邦(UAE)という「国」の一部を構成する「首長国」という位置付けであり、国際的には「ドバイ」は「国」ではありません。
ドバイは中東金融の中心都市。また中東でも指折りのグローバル都市で、巨大モールや超高層ビルなど、規格外の建造物が立ち並ぶ、世界有数の観光地になっています。
世界中から訪れる観光客に加え、周辺国からの外国人労働者が人口の大部分を占めており、様々な国籍や文化、生活習慣が共存する、中東の都市の中でも独特な都市文化を形成しています。
ドバイが属するアラブ首長国連邦とは
ドバイが属するアラブ首長国連邦は、その名の通り、7つの首長国が集まって一つの国を成す連邦国家。
アラビア半島のペルシャ湾沿いに位置し、オマーン、サウジアラビアと隣接しています。
7つの連邦国家は次の通り。
アブダビ首長国
ドバイ首長国
シャールジャ首長国
アジュマーン首長国
ウンム・アル=カイワイン首長国
フジャイラ首長国
ラアス・アル=ハイマ首長国
このうち最も面積が大きいのはアブダビ首長国。その首都アブダビはアラブ首長国連邦全体の首都となっています。
ドバイはアラブ首長国連邦の中でも最大都市であり、経済の中心。外国資本の流入が盛んで、大型のビル建設や観光施設の開発など、近年急速な発展を遂げています。
ドバイとはどんなところ?
実は産油産業のGDP構成比は2%以下
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ドバイというとオイルマネーのイメージがあり、産油国としての印象がとても強いですが、実はドバイのGDPに占める産油産業の割合は2%以下。
ドバイの発展が油田の発掘とオイルマネーからもたらされたことは事実ですが、もともと産出量は中東の他地域やアラブ首長国連邦の他首長国に比べて少なく、かねてより埋蔵量も多くないと言われていました。
そこで早くから「原油に依存しない国」づくりが進められており、21世紀に入る頃には産油産業の構成比は大きく低下。
今では金融や貿易、製造業や建設業、観光業などが経済を支えています。
人口の8割が外国人
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ドバイの人口の8割以上は外国人(2013年)。
中東地域の中でも豊かで都市開発が盛んなドバイには、特に南アジアから多数の外国人労働者(いわゆる出稼ぎ労働者)が住んでいます。
特にインド人の割合が多く、全人口の半分を占めるほど。次いでパキスタン人、バングラデッシュ人が割合を占めます。
また、アラブ首長国連邦(UAE)全体としても人口の8割以上が外国人です。
ただし外国人労働者には厳しい規制があり、単身での居住が条件で家族の同居は認められていなかったり、失業者は強制送還されるなど厳格なルールが定められています。
また、国籍取得は大変難しく、アラブ系国家の出身者でなければ30年以上の継続した国内在住が必要となります。
一方で、UAE国民は政府により手厚く保護されており、教育が無償、所得税が無料などの優遇がされています。
ドバイの公用語と宗教
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ドバイを含むアラブ首長国連邦の公用語はアラビア語ですが、外国人労働者が人口の8割以上を占めていることもあり、英語やヒンディー語(インド)も会話では多く使われます。
事実上の共通語は英語であり、アラビア語以上に英語が使われているのが実態のようです。
宗教はイスラム教ですが、中東の他地域に比べればそれほど厳格ではなく、宗教的な制約はそれほど強くありません。
イスラム世界では忌み嫌われている豚肉を出すレストランがあったり、外国人女性は服装の自由が許されるなど、服装や食生活に対する制約は薄いのが特長です。
これらは外国人労働者が多く、観光業が盛んなドバイならではの性質であり、多文化・多宗教が混ざり合った、他国ではなかなか見ることができない都市文化が存在しています。
過酷な夏季と過ごしやすい冬季
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ドバイは日本の石垣島とほぼ同じ緯度に位置する亜熱帯気候。
季節は夏季と冬季に分かれており、夏季は気温が50度近くに達するなどとても過酷。逆に冬季(11月〜3月)は平均気温20度前後で過ごしやすく、観光もこのシーズンがピークとなります。
夏が長く、気温がとにかく高いので、観光におけるドバイでのショッピングは路面店などではなく、建物空間として空調が整備されたショッピングモールが主流。
中でも世界最大の面積を持つ「ドバイ・モール」は有名な観光スポットで、水族館やアイススケートリンク、映画館などが入っています。
ドバイの発展の歴史
小さな砂漠の漁村からオイルマネーによる発展へ
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ペルシャ湾における漁業や真珠の輸出などが主な産業だったドバイは、もともとは砂漠に覆われた小さな漁村。
20世紀初頭になると、周辺地域の商人たちの貿易港として機能し始めますが、まだ近代的な都市と呼ぶには程遠い状況でした。
それが1966年、ドバイ沖にファテ油田が発見されると地域の状況は一変。
産油産業は一大事業となり、人口の流入と多額のオイルマネーによる経済発展をもたらしました。
しかし、この発展には問題点がありました。
もともとドバイの産油量は少なく、さらに数十年すれば枯渇してしまう埋蔵量であると言われていたのです。
このことから、ドバイではいち早く「原油に依存しない国づくり」が進められました。
原油に依存しない国づくりへの転換
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20世紀後半にかけて、潤沢なオイルマネーを背景とした「原油に依存しない国」づくりが急速なスピードで進められます。
国際空港・エミレーツ空港や世界最大の人工港・ジュベル・アリ港の建設など、人・モノを運ぶインフラが作られ、経済特区の設立などによって海外資本の誘致が進みました。
21世紀に入ると、原油価格の高騰も背景に経済成長はさらに拡大。
市街地には摩天楼がきらめく現代的な大都市が作られていきました。
中でも、首長が主導した「世界一」を目指す開発プロジェクトは世界中の注目を集めました。
世界で最も大きな人工島「パーム・アイランド」や世界長の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」などの巨大建築は、ドバイのシンボルとして観光の名スポットになっています。
世界最大級の観光施設・建造物の数々
高さ世界一のビル「ブルジュ・ハリファ」
photo by Martijn Barendse
高さ828m、地上160階建ての、世界で最も高い建造物。
商業施設やホテル、オフィスや居住区、展望台などからなり、高さ以外にも「最も階数が多い建物」や「最も高い居住区がある建物」など世界一記録を多数保持。
竣工以来、ドバイのシンボル的な位置付けとなっている人類史上最も高い建造物です。
総面積世界最大の商業施設「ドバイ・モール」
photo by Errol Nardan
総面積約111.5万平方メートル、屋内フロア約55万平方メートル、店舗数約1,200が出店する世界最大のショッピングモール。
水族館や屋内スケートリンク、映画館などを備えており、年間数千万人が訪れる巨大商業施設です。
ドバイではこの他に、別地域に「ドバイ・モール」を上回る「モール・オブ・アラビア」を建設中であり、完成すれば世界最大のショッピングモールを塗り替える予定。
世界最大の人工島「パーム・アイランド」
photo by Stuart Rankin
ドバイ沖に建設された世界最大の人工島群。
パームとは「ヤシの木」のことで、全体を俯瞰するとヤシの木を模した印象的な形状をしています。
商業エリアや高級別荘、高級ホテルなどを建設中であり、完成すれば一大リゾート地区となる予定です。
世界最大の噴水「ドバイ・ファウンテン」
photo by Bertrand Duperrin
ドバイ・モールの付近に位置する、世界最大の噴水。
全長275m、噴水の高さは世界一の150mにも上り、夜になれば無数の電灯でライトアップされいます。
ドバイの中でも外国人観光客からとても人気が高い名スポットです。
世界最大の室内スキー場「スキー・ドバイ」
photo by Petr Kadlec
屋内に建設されたスキー場としては世界最大規模の施設。
ドバイは砂漠地帯でもちろん雪が降らないですが、室内は常に氷点下に設定されており、5つのゲレンデを完備。
最高気温が50度を超える砂漠にスキー場を作るという、常識にとらわれない発想のドバイらしい施設です。
おわりに
ドバイは中東地域ということもあり、あまり馴染みがないかもしれませんが、実は日本人観光客も多く、日本からの直航便も出ています。
イスラム圏ですが、比較的治安が安定している地域ですので、海外旅行を考えている人はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。