差別化、集中、コストリーダーシップ…競争優位の戦略とは?

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photo by Enrico Strocchi

アメリカの経営学者のE.M.ポーターが提唱した競争優位の戦略について。

今回は、企業が競争で優位性を築くための3つの戦略パターンを取り上げてみたいと思います。

E.M.ポーターの競争優位の戦略

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photo by Ben Stephenson

E.M.ポーターによると、戦略パターンは大きく分けて以下の3つ。

  • 差別化戦略
  • コストリーダーシップ戦略
  • 集中戦略

それでは、それぞれの意味やメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

【1】差別化戦略

これは読んで字のごとく、自社の製品において他との差別化を図る戦略のこと。

差別化により自社製品の魅力を打ち出せれば、競争の優位性を持てることになります。

1、製品の差別化

品質、性能、デザインなど

2、製品サービスの差別化

アフターサービス、支払い条件、販売店舗数など

3、顧客認知の差別化

広告宣伝による、認知の拡大とイメージの向上

差別化の方法は上記の通り。

ちなみにここでいう差別化戦略とは、価格以外の優位性のことを指しています。

価格の優位性については次のコストリーダーシップ戦略がそれにあたります。

【2】コストリーダーシップ戦略(低コスト戦略)

これは同種の製品を、他社よりも低いコストで生産・販売する戦略のこと。

コストリーダーシップ戦略をとる企業は、他社に比べてできるだけ低単価の商品を販売することで積極的にシェアアップを図ります。

シェアが高くなると、

  • 製品の横展開や付属品販売がしやすい
  • 生産規模・量が増加して生産コストが下がる
  • 他社が撤退しさらなるシェアアップを目指せる

などのメリットがあり、競合に対し優位性を築き易くなります。

また、2つ目の生産規模・量の増加→生産コストの低下は、「規模の経済性」「経験曲線効果」により実現されます。

※「規模の経済性」「経験曲線効果」についてはこちらの記事に記載。

【3】集中戦略

差別化戦略、コストリーダーシップ戦略が比較的大きい市場をターゲットに展開する戦略である一方、集中戦略は市場の中で最も得意とする部分に焦点を当てて、差別化・低コスト化により優位に立とうとする戦略のこと。

先に話した差別化戦略、コストリーダーシップ戦略を狭い市場で集中的に行おうとする戦略のことです。

大企業に比べて経営資源で劣るとしても、この戦略ならその限られた資源を集中的に投下しますので、必ずしも不利な戦いになるとは限らないのです。

それぞれの戦略のリスク

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photo by John Morgan

それぞれの戦略には当然ながら長所と短所があり、戦略上のリスクをはらんでいます。

「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」「集中戦略」において、一般にリスクとされているものはそれぞれ下記の通りです。

「差別化戦略」のリスク

せっかく製品の特徴を差別化できても、競合企業に模倣されてしまえば優位性を失うというリスクがあります。

その場合、競合企業はより低価格な類似品を展開してくることが多く、販売数の減少や製品の値崩れを招き、収益を悪化させてしまいます。

「コストリーダーシップ戦略」のリスク

競合企業が同じくコストで勝負をかけてきた場合、利益度外視の価格競争が発生するリスクがあります。

薄利多売の消耗戦となれば利益率は悪化し、為替リスクや原材料・輸送コスト高などの外部要因が重なれば赤字転落してしまう可能性も出てきます。

「集中戦略」のリスク

集中している市場がそもそも一定以上の規模を持たなくなってしまった場合、事業として成り立たないというリスクがあります。

特に流行り廃りの強い分野では、市場が急激に縮小してしまう可能性もあります。

おわりに

現実的には差別化戦略・コスト戦略などを製品シリーズやブランドラインナップによって住み分けて展開している企業が多いようです。

アパレル企業を例に挙げると、「百貨店向けのセレクトブランド」と「ショッピングモール向けの安価なブランド」をそれぞれブランドラインナップとして持ち、戦略分散やリスク分散を図っていたりします。

業界地図などを広げて、それぞれの業界でどの企業がどの戦略をとっているのか、分析してみても面白いと思います。