知ると恐ろしくなる…ヒートアイランド現象のメカニズムと影響

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photo by Richard Schneider

地方から上京した人なら誰もが驚く、東京の夏の暑さ、そして不快さ。

実は、この暑さはごく最近始まったものだというのはご存知ですか?

気象庁のデータによると、東京周辺で30℃以上となる時間数は、1980年代前半だと年間だいたい200時間くらい

それが近年は…

約2倍の400時間!

どおりで、暑いわけです。

東京がここまで暑くなってしまった要因、それは近年よく耳にするヒートアイランド現象。

今回は知ると恐ろしくなる、ヒートアイランド現象のメカニズムと影響についてお話しします。

ヒートアイランド現象とは?

ヒートアイランド現象

都市部の気温が郊外に比べて高温を示す現象のこと。都市の中心部の気温を等温線で表すと郊外に比べて島のように高くなることに由来。

冒頭でお話ししたデータというのが下の図。約20年前と比べて、関東地方一体が明らかに暑くなっているのがわかります。

中心部が赤くなって、まるで島のように見えます。

環境省データ①

出典:環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版」(2013.3)

これだけ気温に変化があるわけですから、当然ながらそこに住む人の健康や生活、生息する植物などに様々な悪影響を与えています。

身近なところでは、熱中症の増加や熱帯夜による睡眠障害、ゲリラ豪雨など。

ヒートアイランド現象とは、

都市部の熱汚染現象なのです。

ヒートアイランド現象の原因とは?

ヒートアイランド現象の原因は主に3つです。

人口排熱の増加

photo by Chris Goldberg

建物や工場、自動車などの排熱のような人工的に生まれた熱を「人口排熱」といいます。

環境省の推計によると、東京23区の排熱量は平均で約25〜26ワット。東京地域で受け取る年間平均日射量が1㎡あたり約130ワットといわれていますので、東京23区の人工排熱量は日射量の20%に匹敵します。

つまり東京は、太陽から受ける日射量の5分の1くらいの熱を吐き出しているということになります。ちなみに局所的には日射エネルギーにほぼ同等の排熱量が計測されるそうです。

排熱量の内訳は、建物系が約50%、自動車が約 40%、工場が約 10%の割合。やはり、建物系の熱が非常に大きいということがわかります。

建築系とは、高層ビル、商業ビル、居住用建造物などのこと。エアコンの室外機や屋上の冷却塔など、都会のビルは熱を吐き出す仕組みがいっぱいなのです。

アスファルト・コンクリートの拡大

photo by Pockafwye

緑地の減少とアスファルト・コンクリート面の拡大もヒートアイランド現象の大きな原因の一つ。

先ほどの人口排熱は熱を吐き出すものでしたが、こちらは熱を溜め込むものです。

下の図は緑地とアスファルト地の温度の違いです。

環境省データ②

出典:環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版」(2013.3)

アスファルトの方はあきらかに真っ赤。これほどまでに熱量が異なるのです。

都市の高密度化

photo by Pierre Lesage

都市部の建物の密集も、ヒートアイランド現象を引き起こす要因。

密集していることで、風通しが悪く、熱が逃げない状態が続いてしまうのです。

また風通しに加えて、天空率の低さも問題。ビルが密集して天空率が低くなると、熱が空へ逃げていかず、下空間へ溜まったままになるという現象が起こります。

天空率とは?

ある地点から空が見える割合のこと。

コンクリートやアスファルトはただでさえ熱を溜め込んでしまいますから、結果として、四方を熱に囲まれる状況になります。

平均建物高さの推移

出典:環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版」(2013.3)

真夏の東京の高層ビル街の熱気に耐えられず、涼しいビルの中に逃げ込んだ経験がある人も多いと思いますが、実は皮肉にも、逃げ込んだビル自体が熱を吐いていて、その熱をビルの集団が逃がさないようにしているのです。

ヒートアイランド現象が及ぼす影響

ヒートアイランド現象は、健康や生活、植物の生態などに様々な影響を与えていると言われています。

熱中症の発症が増加

photo by Chris JL

ここ数年、夏になると連日ニュースで報道される熱中症。とりわけ都市部での熱中症発症数が増加しており、その大きな要因となっているのが、このヒートアイランド現象です。

国立環境研究所の研究によると、熱中症による死亡率は気温30℃を超える辺りから次第に高まり、34℃を超える辺りから一気に増加曲線を描きます。

熱中症は屋外で発症することが多いですが、室内で発症するケースもあります。特に高齢者は室内での発症例が多く注意が必要です。

熱帯夜による睡眠阻害

photo by James

熱を溜め込んだ都市部では熱帯夜になりやすく、眠りたくても眠れないという睡眠障害が起きやすくなります。

下の図の通り、人は気温が高まるにつれて目を覚ます傾向が高くなるというデータがあります。

日最低気温に対する覚醒割合

出典:環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版」(2013.3)

また注意したいのが、睡眠障害によって弱った体での活動。睡眠を十分取れていない状態で、気温の高い日中に活動をしていると、熱中症を発症する可能性が高まるからです。

大気汚染

photo by Trey Ratcliff

ヒートアイランド現象は大気汚染を招く要因にもなります。その理由は都市の熱が引き起こす上昇気流と順還流の関係性。

都市の循環流

出典:環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版」(2013.3)

上の図のように、まず都市部で暖められた空気が、上昇気流となって空へと流出。そして、空へ流れ出た空気が空中で冷やされると、郊外へ向けて下降しながら、再び都市部へ流れ込んできます。この空気の流れを循環流と言います。

循環流が生まれることによって、都市部の大気汚染物質は外へと拡散されずに、同じ順還流の中でぐるぐると回りながら蓄積することになります。

その結果として、都市の上空を汚染物質がドーム状に覆うことになります。「ダスト・ドーム」と呼ばれるこの現象は夏だけではなく、冬も観測されることがあります。

ゲリラ豪雨と都市型洪水の危険性

photo by Cedric Lange

ヒートアイランド現象と集中豪雨の関係性については、まだ明確なことはわかってはいないようです。

一部の専門家の意見では、都市の高温化によって発生する上昇気流が、短期間に激しい豪雨を降らせる積乱雲を生み出しているのではないかと言われています。実際に、東京では2000年代以降特に短時間降水が増えています。

一方、水はけの悪い都市の構造は洪水の危険性を高めており、局地的が床下浸水などの危険性が高くなっています。

都市の大部分がアスファルトやコンクリートに覆われ、地面の吸水率が著しく低下していることで、地面の高い地域から低い地域へ雨水が流れ局地的な洪水が引き起こされます。「都市型洪水」と呼ばれるこの災害は、都会特有の災害問題となっています。

おわりに

ヒートアイランド現象は健康被害や大気汚染など、都会に住む人の生活に直結する熱汚染です。

夏場の都会に住む人は、熱中症などの健康被害に備え、こまめな水分補給や冷やしグッズの活用など、暑さから身を守ることが大切です。

また、人口排熱排出を抑えるために日頃からエアコンの使い方を考えるなど、都会に住む人ひとりひとりの心がけが重要となります。